ただ使っているだけじゃ気づかない! 日本語フォントに隠されたストーリー

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こんにちは、オカジマです。

皆さん、普段「フォント」をどのくらい使っていますか?
Windowsユーザーの方ならお仕事などでWordを使う時、MSゴシック、メイリオ、游ゴシックなどのフォントなら、なんとなく見たことがあると思います。

その他、デザイナーの方やDTP関係のお仕事をされている方にとっては、商売道具と言ってもいいほど、なくてはならない存在かと思います。

普段何の気なしに目にしているフォントですが、詳しく調べてみると、実は裏に隠されていたストーリーやコンセプトがあって「なるほどな~」と思えることが意外とあるのです!

今回は、使っているだけじゃなかなか気づかない、フォントの豆知識をご紹介したいと思います!

 


 

メイリオは○○をコンセプトにデザインされていた!

まずはメイリオという書体についてです。

Windows VISTAから、OSの標準フォントとして搭載された書体で、今もなお人気が根強いですね。

・・・

突然ですがこの書体、どのようなコンセプトでデザインされたかご存知ですか?

 書体づくりのコンセプト

通常、書体デザインは様々なコンセプトを持って作られます。

たとえばこちらのフルティガー。こちらは「看板など、遠くから見ても読みやすいように」デザインされています。

游ゴシックという書体であれば「読みやすい、本文用のベーシックな書体」としてデザインされています。

・・・

 

 

それではこの「メイリオ」はどのようなコンセプトがあってデザインされた書体なのでしょうか?

 

 

・・・

 

 

 

実は、パソコンなどの画面上で見やすいようにデザインされた書体なんです!

Windowsのシステムフォントとして採用されている「メイリオ」は、紙媒体よりもパソコンの画面上で見る機会の方が多いため、「画面上で、小さなサイズでも読みやすいように」デザインされているのです。

ディスプレイで見やすい書体の元祖

同じコンセプトのもとデザインされた書体の元祖、とも言えるものに「Verdana」という書体があります。

こちらは欧文書体なのですが、メイリオと同じ様に画面上で小さなサイズでも読みやすくデザインされており、1996年にリリースされました。

ちなみにこのVerdanaをデザインしたマシュー・カーター氏は、メイリオのアルファベット部分のデザインも手がけております。

そのデザインはVerdanaがもとになっているそうです。

見比べてみると、確かに似ていますね。

メイリオはタテにつぶれてる?

そういえばメイリオは、他の書体に比べてなんだかタテに潰れているように見えませんか?
実はメイリオは和文のみ縦方向に95%圧縮されて、デザインされているのです。

その理由は欧文と並べてみるとよくわかります。

従来の和文のアルファベットは、和文の字面のサイズに合わせて設計されているようで、アセンダー(上に飛び出る部分)やディセンダー(下に飛び出る部分)が、なるべく飛び出さないような文字デザインになっています。

そうなると相対的にアルファベットの大文字も小さくなってしまい、長文で組んだときに見え方のバランスが悪くなってしまいます。

 

一方メイリオはこの問題を、和文をタテ方向へ95%に圧縮することで解決しました。
逆に和文をタテ方向につぶし、字面の上下にスペースを生むことで、欧文のベースラインに乗せても、アルファベットが小さく見えることはありません。

逆転の発想によって、基となったVerdanaの可読性を保ったまま、和文と欧文の調和を実現したわけですね!(解釈が間違っていたらすみません…)

参考:実はメイリオまだ進化中! 誕生秘話を河野氏に聞いた


 

モリサワ 「タイプラボN」と、フォントワークス 「ロダンNTLG」

続いてこちらをご覧ください。

モリサワの「タイプラボN」という書体です。
幾何学的なラインが特徴のゴシック体で、近代的な印象で素敵な書体ですね。

続いてこちらをご覧ください。

フォントワークスの「ロダンNTLG」という書体です。

ん?

なんだかこの2つの書体、とっても似ていますね…。

もしかして…

無駄に画像を使ってしまいましたが、もちろんパクリなどではございません

一流のフォントベンダー同士がお互いの商品をパクって、リリースするなんてことは、まずありえません。

実はこの「ライプラボN」と「ロダンNTLG」、全く同じ書体がもととなっています。

 実は2つとも、ベースは同じ書体

そのもとの書体というのが、デザイナーの佐藤豊さんが制作した「ニュータイプラボゴシック」という書体です。
こちらの書体を両社にライセンスしたものがそれぞれ「タイプラボN」と「ロダンNTLG」というわけなのです。

なぜ同じ書体なのに、両社で違う名前なのか? ということについては作者の佐藤豊さんが詳細に綴られております。

 

その商品CDに付随するツール(フォントをインストールする物か、かなと漢字を組み合わせる物だったか忘れました)が、フォント選択メニューに8文字しか表示されない(1バイトの英数文字の場合)仕様だったのです。
日本語だったら、4文字までしか表示されません。

当時からとても素直だった私はその要望に従い、New Type-Labo Gothicの頭文字から「NTLG」と短縮名を決めたのです。

そして2004年、モリサワから販売される時、また問題が起きました。
この会社では、すでにタイプラボ・ゴシック(タイプラボG)を写植文字盤で販売(前述)していて、モリサワユーザはその名前に慣れ親しんでいる…という大人の事情がありました。
結局、その慣れている名前の後ろに、Newの略の「N」という文字を加えた「タイプラボN」という名前で販売されることになったのです。

ということで、プレゼンした時には「ニュータイプラボゴシック」という名前だった書体が、商品化される時に「NTLG」と「タイプラボN」という2つの名前になり、ユーザを混乱させることとなりました。

引用元:ニタラゴの秘密

 

なるほど…このような経緯があったとは…。
「ロダンNTLG」のNTLGは「ニュータイプラボゴシック(New Type-Labo Gothic)」の略だったんですね!

 ニュータイプラボゴシックの漢字

ちなみに、ニュータイプラボゴシックには漢字のタイプフェイスデザインはありません。
ひらがなとカタカナのみで、漢字は別書体が使われることがほとんどです。

フォントワークスの「ロダンNTLG」では、漢字部分に「ロダン」という書体が使われています。
フォントワークスの有名なゴシック体ですね。

 

モリサワの「タイプラボN」は漢字を入力すると、このようにゲタ(〓)になってしまいます。

漢字部分には同じくモリサワの新ゴが使われることが多いような印象ですね。

ちなみに、さきほどご紹介した佐藤豊さんのサイトにて、漢字部分に「ルイカ」という書体が使われた、「ニタラゴルイカ」というフォントも販売されております。

お試し版もあるようなので、使用感を確かめてみてはいかがでしょう。

 


 

光朝は○○に合うようにデザインされている!

続きまして、こちらの書体をご存知ですか?

こちらは「光朝」という書体です。
LoFTや無印良品のロゴのデザインなどでも知られる、日本を代表するグラフィックデザイナーの田中一光さんによってデザインされた明朝体です。

実は、こちらの書体はあるものに合うようにデザインされた書体らしいのですが、なんだかわかりますか?

・・・

ヒントはこのタテとヨコのコントラストの強さです。

 

 

・・・

 

 

わかりましたか?

 

 

 

 

正解は「モダンローマン体」です。
こちらの光朝は田中一光さんが、日本にやってきた写植のBodoniにあう書体を、ということでモダンローマンに合うように作られた書体なんだそうです。

 

モダンローマンについて、詳しくはこちらから

 

 

光朝とBodoniを並べてみると、その特徴がよくわかります。

 

Bodoniなどのモダンローマン体はタテの線に比べ、ヨコの線が細く、線のコントラストがとても強いのが特徴です。

同じ様に光朝もタテに比べヨコの線が細く、モダンローマンのようにとても優雅で上品な印象があります。

 

他の明朝体とも比べてみましょう。

それぞれリュウミン、マティスの太いウェイトと並べてみました。
やはり比べてみると、タテとヨコのコントラストが強いですね。

そして光朝のヨコ角は直線的で起筆も鋭く、洗練された印象があります。

 

光朝のアルファベットを見てみよう

光朝のアルファベット部分は、セリフの付き方や各部の細かい処理は、Bodoniというよりも、同じモダンローマン体のDidotに似ている印象です。

光朝のアルファベットの小文字は、BodoniやDidotに比べてエックスハイトが高く、ディセンダーが短くつくられているようです。


いかがでしたでしょうか。

普段何気なく使っているフォントですが、裏に隠されたコンセプトやストーリーなどを知っておくと、使い方・選び方に違いが出てきそうですね。

そして書体は1文字1文字、丹念に手作りされております。
そういった事実を知っておくと、よりよいデザインワークができるのではないでしょうか。

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