こんにちは、オカジマです。
今回も文字の大きさの単位についての記事です。何度も何度もすみません。
前回は「級」や「号」についての記事でした。
その記事の冒頭でも触れていますが、文字の大きさには「ポイント」という単位もあります。
そこで今回は、「前回記事で少ししか触れなかったポイントについて掘り下げた記事を書こう!」
と思ったのですが・・・
いろいろとある「ポイント」
少しポイントについて調べてみると、とってもややこしいことに気が付いてしまいました…。
ひとくちにポイントといっても、調べてみたらたくさんの種類があったのです。
なぜこんなに種類があるのかというと、別々の時代に、別々の地域で、それぞれの文化に基づいて確立しているのでいろいろな種類ができてしまっているようです。
そしてそのどれもが、日本人にとってあまり馴染みのない単位をベースにつくられているため、とってもややこしいのです・・・。
ちなみにポイントという単位を用いて、文字の大きさを表す仕組みのことを「ポイントシステム」というのですが、今回は数あるポイントシステムの中から、まず一番ベーシックなものからご紹介していきます。
ちなみに今回の記事の内容は、日常生活のレベルではあまり役に立ちません。
最もベーシックな「DTPポイント」
現在、コンピューター上で広く用いられているのはこちらのDTPポイントと呼ばれるものです。
最もベーシックとか言っておきながらいきなり「DTP」というなじみのないワードを出してしまってすみません。
DTPとは「デスクトップパブリッシング」の略でして、デスクトップの言葉の意味の通り、机の上でコンピューターを使って、組版など行うことを指します。
DTPポイントは「ポストスクリプト・ポイント」とも呼ばれるそうで、1985年にAdobe 社とApple社により制定され、国際的な基準となっています。
DTPポイントの大きさ
DTPポイントの大きさはミリメートルではなく、あまり日本では馴染みのない「インチ」が基準となっています。
1DTPポイントは、国際インチ(2.54cm)を1/72したものと定められております。
コンピューター上で用いるものなので正確に1/72されており、ミリメートルに換算すると約0.353 mm (0.3528 mm)となります。
アメリカ生まれの「アメリカン・ポイント」
続いてはアメリカン・ポイントと呼ばれるものです。こちらはアメリカンという名の通り、アメリカで生まれたポイントシステムです。
アメリカン・ポイントの大きさ
アメリカン・ポイントはミリメートルに換算すると約0.3514 mmとなります。
DTPポイントに比べるとほんのちょっとだけ小さいですね。
なぜこのように同じポイントなのに若干の誤差が出てしまうのかというと、前述の通り確立した年代だったりベースとなる単位だったりが異なるからなのです。
こちらのアメリカン・ポイントはDTPポイントが確立されるよりもずっと前、1886年ごろに、ネルソン・C・ホークス(Nelson C. Hawks)によって考案されたものです。
このアメリカン・ポイントは「ジョンソンパイカの1/12」と定義されております。
ジョンソン??? パイカ??? ってなんなのでしょうか?
パイカとは?
まず、ポイントに関連する単位として「パイカ(pica)」と呼ばれるものがあります。
こちらは欧米でよく用いられる印刷用の単位で、ポイントシステムが確立する以前から存在する伝統的な単位だそうです。
基本的に1パイカ=1/6インチ=12ポイントとなります。
ジョンソンパイカは、アメリカでポイントシステムが確立する以前に広く普及していた単位で、このジョンソンパイカを1/12したものがアメリカン・ポイントなのです。
ジョンソンパイカは83パイカを350 mmとすると定義されています。
なので1パイカ(12アメリカン・ポイント)あたり、約4.2168 mm、つまり1アメリカン・ポイントあたり、約0.3514 mmとなるのです。
・・・ちょっとややこしいですが、成り立ちや、元となる単位が異なるからそれぞれのポイントでちょっとずつ誤差が出てきてしまうんですね。
実は日本の金属活字においてもこのアメリカン・ポイントが関係しております。
1962年に制定された活字の号数のJIS規格においてもアメリカン・ポイントが下地になりました。
前回の記事のこの引用部分、
かつて、日本で公文書の作成の際に使われたフォントのサイズは「5号」と定められていました。この「5号」とおおよそ同じくらいのサイズであったのが10.5ポイント。従来の「5号」に代わり、1962年にJIS・日本工業規格の「フォントの暫定的な基準」として設定されたのが、本日まで残る謎の「10.5ポイント」です。
出典:なぜWordのデフォルトフォントサイズは「10.5」なのか?
実は「10.5ポイント」は、今現在広く使われているポイントシステム(DTPポイント)ではなく、アメリカン・ポイントの事を指すのでした。
そして現在でも、InDesignでは「アメリカ式ポイント」を選べるので、アメリカン・ポイントは現役のポイントシステムですね。
・・・
ここまで2つを紹介してきました。
おそらく大半の場合は一つ目のDTPポイント(国際インチの1/72で約0.35mm)を覚えておけばOKな気がします。
もしかしたら、もうすでにここまで見てくれている方はいないかもしれませんがまだ続けます!
ここからは一気に歴史のお話になります。
あの書体とも関係がある? 「ディド・ポイント」
ヨーロッパで広く普及してきたポイントシステムにディド・ポイントというものがあります。
フランスのF.A.ディド(François-Ambroise Didot)によって1780年代前半に考案されました。世界で2番目に古いポイントシステムとも言われています。
ディド、と聞くと書体好きな方の中にはこちらを思い浮かべる方もいるかもしれません。
こちらはフェルミン・ディドによって作られた「Didot」というモダンローマン体ですね。
実はF.A.ディドは、この書体を作ったフェルミン・ディドの実父にあたるそうです!
ディド・ポイントの大きさ
ディド・ポイントの大きさはフランスのインチ格の1/72とされており、ミリメートルに換算すると0.3759mmとなります。
ほかのポイントシステムに比べて、やや大ぶりでしょうか。
シセロ
ディド・ポイントに関連する単位として「シセロ(cicéro)」があります。
こちらは先ほどの「パイカ」と同じように12 ディド・ポイント(4.5108 mm)で1シセロとなります。
シセロはフレンチ・パイカとも呼ばれるようで、こちらも伝統的な単位とのことでした。
そしてこちらのディド・ポイントですが、現在の日本ではほとんど普及しておりません。
ですので、ディドポイントの大きさだったり、シセロだったりは豆知識程度におさえておくといいかもしれません…。
ポイントシステムの始祖「フルニエ・ポイント」
ラストは最も古いポイントシステムと言われるフルニエ・ポイントです。
こちらもフランスのフルニエ(Pierre Simon Fournier)が考案したとされ、フレンチロイヤルポイント(French Royal Point)とも呼ばれるみたいです。
フルニエ・ポイントの大きさ
フルニエ・ポイントの大きさは、0.3478 mmとも、0.34882 mmとも言われておりますが、その起源には諸説あり、現在は詳細不明だそうです。
フルニエ・ポイントについて調べてみると、このような記述を見つけました。
フルニエのシステムでは、フランスのインチ単位に近い値を12等分して1リーニュ(ligne)を算出し、さらにそれを6等分して1ポイントの大きさを算出している。
出典:タイプサイズの単位(Typographic unit)
インチを1/72してポイントを割り出すという方法はこのフルニエが確立したと言われています。
フルニエ・ポイントは現在では使われておりませんが、ポイントシステムの基礎は今も脈々と受けつがれているようですね。
さきほどご紹介したディド・ポイントも、フルニエのポイントシステムを改良して考案されたそうです。
いろんなポイントを比べてみよう
いままで出てきたポイントの大きさを一度まとめてみましょう。
- DTPポイント=0.3528 mm
- アメリカン・ポイント=0.3514 mm
- ディド・ポイント=0.3759mm
- フルニエ・ポイント=0.3478 mm※1
※1 小泉 均、「タイポグラフィ・ハンドブック」、研究社、2012年、187ページ の記述を参考にしております。
それぞれ12pt相当にするとこんな感じで大きさにバラつきが出ます。
並べてみるともっと差が出てきますね。
1ポイント相当のときは「ほんのちょっとの差じゃん」と思ってましたが、使うポイントによってこれほど差が出るとは面白いですね。
全てのポイントを比較する必要性があるのかはよくわかりませんが、もしかしたらDTPポイントとアメリカン・ポイントを勘違いして、何かトラブルになる・・・かもしれませんしご注意ください。
様々なポイントシステムについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
「サクッとポイントについて調べて記事を書こう!」と思って着手し始めましたが、全然サクサクいかずにくじけかけました・・・。
そんな方はいないかと思いますが、ポイントシステムについての記事を書くのはあまりオススメしません!(大変なので)
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