こんにちは、cottala-becco編集担当のチャリダー ハセガワです。
みなさんは「フォント」について特に意識したことはありますでしょうか。
普段何気なくパソコンなどで書類を作成したり、Webサイトを閲覧したり、雑誌や書籍などの印刷物を読んだりした時の文字は全て「フォント」を使用して作成されています。
今回はそんな身近な「フォント」についての解説を致します。
フォントとは
フォントとは、本来「ある書体を表現するための、ひと揃いの活字」の事で、活版印刷に使う活字を表わしていましたが、近年では活版印刷が減少した事によりコンピュータで文字を表示・印刷できるように、文字形状をデータとして表したデータファイルを「フォント」と呼ぶようになりました。
本来のフォントである金属活字
著作権者:katorisi、ライセンス:CC BY-SA 3.0、<https://ja.wikipedia.org/wiki/活字>
コンピュータでのフォント
「ビットマップ」フォントと「アウトライン」フォント
フォントとは、コンピュータのデータファイルのことを指すようになりましたが、コンピュータ上でも様々なフォントがあります。
その中で、拡大するとギザギザに表示される「ビットマップフォント」と、拡大しても滑らかな表示ができる「アウトラインフォント」の大きく2つに分類されます。
ビットマップフォント
ドットの組み合わせで文字を表現したフォントで、MS-DOSやワープロ専用機などの初期のコンピュータで使用されていましたが、文字の大きさを変更した場合に綺麗に表示されない事などから、現在はほとんど使用されなくなりました。
アウトラインフォント
文字の輪郭線の形状を、関数曲線の情報として持つフォントで、拡大しても綺麗に表示されることから印刷結果がコンピュータの画面上で確認出来るため、現在の主流となっています。
なお、アウトラインフォントには様々な形式があり代表的な形式としては、PostScriptフォント、TrueTypeフォント、OpenTypeフォントなどがあります。
アウトラインフォントの種類
ビットマップフォントは、拡大した時にギザギザになってしまう事でデザインしにくい問題により、次第にアウトラインフォントに置きかわり、現在はアウトラインフォントが主流となりました。そのアウトラインフォントにも様々な形式が存在し、主な物にPostScriptフォント、TrueTypeフォント、OpenTypeフォントがあります。次にその種類を詳しくを説明します。
PostScriptフォント
Adobe Systems社が開発したアウトラインフォントで、同じく同社が開発したページ記述言語であるPostScriptをベースに開発されました。
Apple社のプリンタでPostScriptが採用されたことから、Macintoshで広く普及し、コンピュータ上でのデザインがそのまま印刷される為、主に出版や広告などの印刷物などで使用されている。なお、アウトラインを表示する為はAdobe Type Managerというユーティリティソフトウェアが必要で、コンピュータとプリンタそれぞれにフォントをインストールする必要があります。
Adobe Type Manager
PostScriptフォントの滑らかな表示を行うために必要。
また、和文フォントは非常に高額な為、複製防止プロテクトが複雑で不評であった。近年は後継であるOpenTypeフォントに置き換わりつつある。
PostScriptフォントの種類
Type 1フォント
欧文(1バイト)用のPostScriptフォント形式。ビットマップフォントとアウトラインフォントが対になって1つのフォントとして扱われます。
OCFフォント
OCFとはOriginal Composite Fontの略で、和文(2バイト)用のPostScriptフォント形式。Type 1フォントでは1つのフォントファイルに1バイト(256文字)しか収納できず、数千文字にも及ぶ日本語の文字を1つのファイルに収めることができなかった。そのため複数のType 1フォントを積み重ねたコンポジット構造のフォントとして策定されました。
このOCFフォントの登場により、日本でもコンピュータによる印刷物の作成行うDTP(Desktop Publishing)が普及する事となりました。
CIDフォント
CIDとはCharacter IDentified-Keyedフォントの略で、OCFフォントの後継として開発され、コンポジット構造を解消しシンプルな構造になった。また、OCFフォントで不可能だったPDFへのフォントの埋め込みや字体切り替えが可能となりました。
TrueTypeフォント
Adobe Systems社のPostScriptフォントのライセンス価格が非常に高額であった為、PostScriptフォントに対抗する為にApple社がMicrosoft社と共同開発したフォント形式。
特別なユーティリティソフトウェアなどが不要で簡単に使用出来き、PostScriptフォントやOpenTypeフォントより比較的安価な価格設定がされており導入しやすいことから、MacintoshとWindowsで普及している標準的なフォントです。
Macintoshでは「Osaka」、Windowsでは「MS ゴシック」「MS 明朝」「メイリオ」などが該当します。
なお、拡張子が「.ttf」と「.ttc」という2種類のTrueTypeフォントファイルがあるが、「.ttc」はTrueType Collection の略で、字間を詰めたプロポーショナルフォントや、字間が均等な等幅フォントなど、複数の「.ttf」ファイルを1つのファイルにまとめた物です。
MacintoshとWindowsでフォントの互換性がなく、それぞれの環境向けに販売されている。なお、最近のMacintosh(Mac OS X以降)ではWindows用のフォントが使用可能ですが、フォントメーカーは推奨しておらず、不具合がある可能性があります。
OpenTypeフォント
PostScript フォントとTrueTypeフォントの後継として、Adobe Systems社とMicrosoft社が共同開発したフォント形式。
TrueTypeを発展させ、PostScriptフォントのデータ形式も内包できるようになっており、TrueTypeフォントかPostScriptフォントのいずれかをベースに作られる。OpenTypeフォントの拡張子は、PostScriptフォントのみからなるものは常に「.otf」、TrueTypeフォントを含むものは「.ttf」もしくは「.otf」となります。
OpenTypeフォントの構造イメージ
多言語対応の国際的なエンコーディング標準であるUnicodeをベースとすることにより、WindowsやMacintoshといった異なるプラットフォームの違いを問わず、同様の出力結果が得られます。また、最大約65,000文字が登録可能で異体字や記号など文字種が大幅に拡張されました(フォントによって文字種数が異なる)。
その結果、従来データのやりとりで発生していた「文字化け」や「文字ズレ」などの問題が解消。プリンタやイメージセッタに高価なプリンタフォントをインストールすることなく直接出力できるようになりました。
拡張された異体字(Adobe Illustratorの場合)
Adobe Illustratorでは、異体字の字形を変更可能で、「辺」だけで下図の字形に変更できる。
PostScriptフォントベースのOpenTypeの規格
Adobe Systems社が規格化したAdobe-Japan1という日本語の文字集合規格があり、2016年現在Adobe-Japan1-0から1-6までの7種類が定義済されてます。
PostScriptフォントベースのOpenTypeフォントでは、この文字種号規格ごとにAdobe-Japan1-3から6までフォントが用意されているものがあり、用途に応じて使い分けて使用します。
業務用フォントメーカー、モリサワ社のOpenTypeフォントの一例
文字集合規格 |
グリフ(字体)数 |
フォント名 |
Adobe-Japan1-3 |
9,354 |
A-OTF Ryumin Std L-KL.otf |
Adobe-Japan1-4 |
15,444 |
A-OTF Ryumin Pro L-KL.otf |
Adobe-Japan1-5 |
20,317 |
A-OTF Ryumin Pr5 L-KL.otf |
Adobe-Japan1-6 |
23,058 |
A-OTF Ryumin Pr6 L-KL.otf |
たくさんの種類があるOpenTypeフォント
OpenTypeフォントはベースにしたフォント形式によってPostScriptフォントベースの物とTrueTypeフォントベースの物があることは説明しましたが、これ以外にもPostScriptフォントベースのOpenTypeフォントには文字種号規格ごとに現時点で4種類ありさらにJIS2004(JIS X 0213:2004)対応のフォントなどもあります。
これらの種類の違うOpenTypeフォントを置き換えた場合、収録字体数の違い等により、文字化けや意図しない字形に置き換わる場合がありますので、注意が必要です。
OpenTypeフォントの種類(一部)
規格 |
拡張子 |
見分け方 |
TrueTypeフォントベース |
.ttf、.ttc、otf |
拡張子が「.ttf、.ttc」の場合TrueTypeかOpenTypeかの区別が付かない |
PostScriptフォントベース |
.otf |
ファイル名にStdが付く |
PostScriptフォントベース |
.otf |
ファイル名にProが付く |
PostScriptフォントベース |
.otf |
ファイル名にPr5が付く(例外あり) |
PostScriptフォントベース |
.otf |
ファイル名にPr6が付く(例外あり) |
PostScriptフォントベース |
.otf |
ファイル名にNが付く |
ベースフォントによる区分けと普及度合い
PostScriptフォントベースのOpenTypeフォントは、PostScriptフォントの後継として、また収録字体数の多さなどから、印刷・広告・Web業界など文字を商品として扱う業種での業務用フォントとして普及しています。
TrueTypeフォントベースのOpenTypeフォントはWindows付属の拡張子が「.ttf」や「.ttc」のフォントの一部は既にTrueTypeフォントベースのOpenTypeフォントに置き換わっている物があります。しかしながらTrueTypeフォントとの違いがあまり無いため移行が進んでいません。
このようにフォントの意味合いは技術の進化と共に変化し、コンピュータの初期のビットマップフォントなどはデザインの制限が多く、アウトラインフォントが登場しても仕様が大変複雑でしたが、近年はコンピュータの性能向上と共に扱いやすく整備されてきました。
印刷物などを作成する場合やWebページを作成する時に、フォントの事を知っておくことで、より良い成果物を作り出す事が出来ると思います。
投稿者プロフィール
- 最近自転車にはまり、ロードバイクやクロスバイクであちこち走っています。風を切って走ると気持ちいい。北海道は雪のため乗れるシーズンが短いのが残念。
最新の投稿
- やってみる2016.12.23Wordでカンタン!年賀状印刷 〜文面印刷編〜
- やってみる2016.12.20Wordでカンタン!年賀状印刷 〜宛名面印刷編〜
- 知る2016.11.18意外と知らないフォントの話 その成り立ちと現在まで
広告