みなさんは書体について詳しいでしょうか?
詳しいってどの程度? という感じですが、おそらく明朝体とゴシック体の違いはわかると思います。
しかし、日本語ではなく欧文の書体となるといかがですか?
欧文書体は大別して「セリフ体」と「サンセリフ体」の2つに分類できます。
というわけでデザイナーではない私ではありますが、あまり知られていない欧文書体のセリフ体・サンセリフ体について、その分類や違いなどいろいろと調べ、皆さまにもわかりやすいようにまとめてみました。
ただ紹介するだけではあまり面白くないので、その書体がどんな場面で使われているのかもあわせて見ていきましょう!
まず、セリフ体とは?
セリフ体とはこんな形の書体のことを言います。
日本語で言うと、明朝体にイメージが近いでしょうか。
セリフ(serif)というのはこの部分のことを言います。
このような飾りがついている書体のことをセリフ体と呼びます。日本語で言えば「ウロコ」と言いかえられますかね。
先ほど、「欧文書体は大別して「セリフ体」と「サンセリフ体」の2つに分類できます」と言いましたが、実はセリフ体の中にも細かな分類があります。その書体が作られた年代や、文化的な背景・歴史、使用目的などを調べて紹介することも可能ですが…
正直奥が深すぎてサラッと読めるものにならなさそうなので、というか途中で挫折しましたので、今回はパッと見でわかりやすいように、見た目の形で分類していきたいと思います。
せっかくセリフがついているので、今回はそのセリフの形状で分類してみましょう
ブラケットセリフ
まずは「ブラケットセリフ」を見ていきましょう。ブラケットセリフとはこのようにセリフの形状が三角形(Bracket)のものを指します。セリフ体の中では一番良く見たことのある、馴染みのある形だと思います。
Garamond
こちらは「Garamond(ギャラモン)」という、セリフ体を代表する書体です。私たちが思うセリフ体の、一番スタンダードな形ではないでしょうか。エレガントで上品な印象ですね。
この書体は旧Apple Computerのロゴに使われていました。(正確にはApple Garamondという書体だそうです。)
コンピュータ関連の会社のロゴだと、もっと近代的な書体を用いそうなイメージですが、あえてこのギャラモンを使っていたのでしょうか。「Think Different」なんですかね。
ヘアラインセリフ
続いては「ヘアラインセリフ」です。Hairline(ヘアライン)とは「(毛のように)細い線」を示す言葉で、ブラケットセリフと比べて細いのが特徴です。どういった書体なのか見てみましょう。
Didot
こちらがヘアラインセリフを持つ「Didot(ディド)」という書体です。確かにセリフがかなり細く直線的で、縦のラインと比べてもコントラストがはっきりしているため、よりモダンな印象ですね。加えて、なんだか女性的な気品や高級な印象も感じられます。
そんなイメージからか、こちらのディドはファッション誌「ヴォーグ」のロゴに使われています。
スラブセリフ
今度は逆に、今までのものと比べて太く四角いセリフを持つものです。こちらは「スラブセリフ」と呼ばれます。
Rockwell
スラブセリフを持つ「Rockwell(ロックウェル)」という書体です。見ての通りセリフが四角くなっています。
セリフが太い分、少し無骨な感じで、先程のブラケットセリフ、ヘアラインセリフとは大きく印象が変わりましたね。
この書体が用いられているロゴなどが見つけられなかったのですが、スラブセリフ書体が用いられているロゴはたくさんあります。
自動車メーカーならHONDAやVOLVO、その他コンピュータ関連のIBMや、アパレル・インテリアブランドのマリメッコのロゴなんかもスラブセリフ体です。
3種類を並べて見比べてみよう
セリフ体3種類を並べてみました。こう見ると、全て同じセリフ体のはずなのにかなり印象が違いますね。
もちろんセリフの形状だけでなく、それぞれの書体の作られ方や時代背景が異なるためこれだけ見た目が大きく変わっているわけですが、それを差し引いても、それぞれがこれだけ違った個性を持っているのを見るとなかなか面白いですね。
以上がセリフ体の紹介でした。続いて、サンセリフ体についても見てみましょう。
サンセリフ体って?
サンセリフ体はこのような書体のことを言います。
おっと、セリフが見当たりません。
このようにセリフのない書体をサンセリフ(sans serif)体といいます。「sans(サン)」とはフランス語で「無い」という意味です。セリフがないのでサンセリフ、というわけです。
日本語で言うとゴシック体に近い印象かと思います。
ちなみにサンセリフ体は「グロテスク体」とも呼ばれることがあります。
サンセリフ書体はGrotesque[グロテスク]とも呼ばれたが,これはエレガントなセリフ書体に対する呼び名であった。
小泉 均、「タイポグラフィ・ハンドブック」、研究社、2012年、84ページ
Grotesque(グロテスク)を辞書で引いてみると…「怪奇な、異様な」といったような意味だそうです。エレガントな印象のセリフ体が一般的だった当時、サンセリフ体はよっぽど変わった書体だったみたいですね。
サンセリフ体が一般的となり、あちこちで見かけるようになった今ではなかなか理解しにくい感覚かもしれません。
こちらのサンセリフ体も、いくつか分類できます。見ていきましょう。
ネオ・グロテスク
まずは、ネオ・グロテスクです。「ネオ」という名の通り、新しく洗練されたグロテスク体(サンセリフ体)であり、サンセリフの正当な進化版みたいなところでしょうか。サンセリフ体の中でもいちばんスタンダードなスタイルと言ってもいいかもしれません。
Helvetica
こちらはネオ・グロテスクの代表的な書体「Helvetica(ヘルベチカ)」です。
私がこの書体を見たときの最初の印象は「なんか、普通。」でした。なんだか、どこでも見たことあるような感じですよね。
実はこのスタンダードさが非常に高い汎用性を生んでおり、ヘルベチカは1957年の登場以来60年近くに渡り世界中でとても愛されています。
世界のみならず日本でも多くの企業のロゴに採用されており、目につく機会が多かったりします。道理でなんだか見たことある感じがするんですね。
例えば、「Panasonic」や「National」のロゴはこのヘルベチカが使われています。
ジオメトリック・サンセリフ
ジオメトリック・サンセリフとはサンセリフの中でも、より幾何学的な印象のものを指します。「ていうかサンセリフ体自体、セリフ体に比べて幾何学っぽくない?」と思ってしまいますが、一体どういうことなんでしょうか? 百聞は一見にしかず、早速見てみましょう。
Futura
こちらは「Futura(フツラ)」という書体です。おわかりでしょうか。直線と丸で出来ているような感じで、たしかに幾何学的です。先程のネオ・グロテスクよりもスタイリッシュというか近代的というか、「最近の書体」っぽい感じもしますね。
ヘルベチカよりも新しい書体なのかな、と思ったら、実はFuturaの登場は1927年です。90年近く前とは…。
ちなみに「Futura」とはラテン語で「未来」を意味する言葉だそうです。現代でもデザインの現場では数多く使われているようなので、その名をしっかりと体現しています。
こちらのフツラは、「ルイ・ヴィトン」のロゴに使われていたりします。あのLとVが合体したマークではなく、「LOUIS VUITTON」の文字の方です。
その他、任天堂のファミリーコンピュータのロゴなんかもフツラ以外のジオメトリック・サンセリフの書体が使われております。
ヒューマニスト・サンセリフ
ヒューマニスト・サンセリフは、ローマン体(セリフ体)の骨格がベースとなっており、サンセリフ体の中でもより手書きっぽいものを指します。
Gill sans
こちらは「Gill Sans(ギル・サン)」という書体です。こう見るとたしかに、今までのネオ・グロテスクやジオメトリック・サンセリフよりも、手で書いたようなニュアンスが非常に強いですね。
特徴はやはり「a」や「g」でしょうか。他のサンセリフと比べても、その違いは顕著ですね。どちらかと言うとローマン体に近いように見えます。
ギル・サンは「ロールス・ロイス」のロゴに使われていることで有名です。
その他、MARY QUANTのロゴや、iPhone、iMac、MacBookといったようなApple製品のロゴにもヒューマニスト・サンセリフが用いられています。
サンセリフ体も見比べてみよう
セリフ体と同じように、サンセリフ体も並べてみました。
おや、パっと見ではあまり区別がつかないかもしれません。線の太さが均一だからか、セリフ体ほど顕著に違いが現れてませんね。しかし、「a」なんかを見るとそれぞれ個性が出ていて違いがわかります。
いかがでしたでしょうか? セリフ体とサンセリフ体の違い、そしてそれぞれの細かな分類を紹介いたしました。
なんとなく欧文書体の見分け方がわかったでしょうか?
街を歩いているとき、欧文書体が目に付くたびに「あ! これはヘアラインセリフ! これはヒューマニスト・サンセリフ!」と口に出してみるのもいいかもしれません。
おそらく、「なにそれ?」とかなり鬱陶しがられると思います。ケンカにならないようご注意ください。
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